Interview

北の大地で実現させる、
世界的なメーカー
という将来像。

株式会社FJコンポジット 代表取締役社長

津島 栄樹さん

主に電子関係の部品材料の開発・製造を行っているFJコンポジットが、静岡県富士市から千歳市に本社を移転してから6年が経った。北海道という地の利を活かしながら順調に事業を拡大する中で、社員も移転時の5倍以上に増え、新たに大規模な工場を建てる計画も進んでいる。社長の津島氏が描いた「世界的なメーカーになる」という将来像が、北海道で現実のものになりつつある。

  • 本社所在地
    北海道千歳市柏台南2丁目2-3
  • 道内所在地
    北海道千歳市柏台南2丁目2-3
  • 企業サイトURL
    https://www.fj-composite.com/
  • 事業内容
    各種複合材料の開発・製造・販売

ー事業内容について教えてください。

当社は製造業、主に電子関係の部品材料を作っている会社です。現在注力している製品は3つありまして、1つは電気自動車などに使われるセラミックス絶縁回路基板、もう1つは半導体の熱を放熱するための銅とモリブデンのヒートシンク材。そして、カーボンの粉と樹脂で作る燃料電池セパレータ、これらのものづくりをしています。

ー北海道に本社を移した理由は?

大学を卒業後、石油会社で石油精製関係の仕事を始めて、その後すぐに新事業としてスタートした、石油ピッチ系炭素繊維の研究開発部門に異動しました。10年ほどその研究をしていたんですが、会社が事業を中止することになり、培ってきた成果をなんとか事業化したいと思って、退職して作ったのがこの会社です。前職の関係があって、静岡県富士市で開業しました。社名のFとJは富士市のことです。その後の事業拡大で大型工場の建設を検討し、全国各地を探した結果、北海道千歳市が非常に優れている土地だと判断したわけです。

ー千歳という土地の魅力は?

これは北海道全般に言えることですが、冷涼な気候ということが挙げられます。当社の工場では、いろいろな装置から膨大な熱が発生します。それをエアコンで冷やすにはエネルギーを大量に消費しなければならないのですが、北海道なら外気を取り込めば涼しくなりますし、冬場は装置の熱が暖房がわりになります。非常にエコで快適に仕事ができるわけです。北海道の中で千歳を選んだ理由としては、やはり交通の便ですね。製品の半分以上は海外に出荷しているので、新千歳空港が近いというのは非常にメリットが大きいです。

ー実際に移転して、社員の反応は?

創業当初から「会社が大きくなったら移転する」と言っていたので、社員との話もスムーズに済みました。北海道にはたったの4人で来たんですが、その時に私が描いていたのは、世界的なメーカーになるという将来像でした。その頃は誰も信じてくれなかったと思いますが、今では現実味を帯びています。社員も今では21人になり、これからも事業の拡大とともに増やしていきたいと思っています。

ー北海道に移転したメリットは?

空港の多い北海道はアクセスが便利です。以前の拠点だった富士市から大阪のお客さんのところに行くとすると新幹線になりますが、実は新千歳からLCCを使って大阪まで飛ぶ方が、コストも安いし時間も早いんです。九州などで考えると、そのメリットはもっと大きくなりますね。あとはやっぱり、北海道だとお客さんが喜んで出張に来てくださいます。仕事以外にも、食べ物も美味しいですし、観光スポットも多いし、北海道に魅力を感じるというお客さんは多いですね。北海道が持つイメージの良さも大きなメリットです。

ー移転でデメリットと感じることは?

北海道の工場は、本州に比べると建物が非常にしっかりできているんですね。断熱材も入って、窓ガラスも二重のペアガラスで、おかげで冬は非常に暖かく過ごすことができるんですが、建設費用は高くなりますね。積雪の時期には工事が止まったりと、建設期間も限られてしまうところもあるかと思いますが、それ以外にデメリットを感じることは少ないです。

ーものづくりにおける北海道の優位性は?

新しいものを開発するにあたって、普段からのびのびと暮らしていないと、なかなか発想というのは湧きづらいですね。そういう意味で北海道は、広い大地の中で、新しい思考を巡らすためには適した土地だと思います。東京や大阪の人混みの中より、北海道の大自然の中のほうが、新しいアイデアが生まれやすいのではないでしょうか。

ーウィズコロナ時代を見据えた取り組みなどは?

どの会社もそうだと思いますけど、コロナによって出張が減って、その代わりにWeb会議が非常に増えました。今日の午前中も中国のお客さんとWebで会議しましたし、アメリカやヨーロッパのお客さんともしょっちゅうWeb会議を開いています。従来に増して、北海道の地理的な不利というのは少なくなってきていると思いますね。

ー今後の展開やビジョンを教えてください。

おかげさまで事業が順調に拡大しており、2022年には第3工場の建設が決まって、その後も大きな工場を建てる計画が進んでいます。現状では千歳およびその周辺ということで考えてはいますが、特にこだわりはありません。どこか遠くのまちでも、ぜひ来てほしいというところがあれば、環境さえ整っていればぜひ進出させていただきたいと思っています。その環境とは何かというと、やっぱり人材です。私の目標の一つとして、北海道で大きな雇用を生むような企業になりたいというのがあります。私自身もそうでしたが、北海道内の仕事が少なくて、本州で就職するしかないという学生さんが非常に多いんです。そんな若者が、北海道でものづくりをしてずっと生活できる、そういう場を作りたいと思っています。

Profile

株式会社FJコンポジット 代表取締役社長

津島 栄樹さん

  • 1982.4
    東燃(株)入社 川崎工場配属
  • 2020.4
    株)FJコンポジット設立 代表
  • 2014
    中小企業優秀新技術・新製品賞 優秀賞受賞(りそな財団)
  • 2015
    北洋銀行ドリーム基金 中小企業新技術研究助成 受賞
  • 2015
    ものづくり日本大賞 特別賞 受賞(内閣府)

北海道生まれで北大工学部を卒業後、石油会社で炭素繊維の開発に取り組む。 
研究が中止となったことから会社を退職し独立。 
資本金300万円の有限会社を2002年に静岡県富士市で設立し、もの作り企業を目指す。(2006年増資により株式会社に組織変更)
燃料電池セパレータ、半導体用ヒートシンク、セラミックス絶縁回路基板の開発・製造・販売を目指す。
2015年に千歳市に工場を建設し完全移転。 
2020年だけでも23社の大企業(内14社は海外)とNDAを締結、売上の50%以上が海外ユーザーで、EV、FCV、RFB、5G通信に貢献する製品の量産化を目指す。

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