Interview

もっと創造的な
ビジネス展開のため、
もう一度北海道に拠点を。

ウェルネット株式会社 代表取締役社長

宮澤 一洋さん

「東京はあまりにも情報が多すぎる」と語るのは、電子請求や電子決済を手掛けるウェルネット社長の宮澤氏。札幌で起業し、東京に本社を移転したが、2021年にふたたび本社を札幌に戻した。ビジネスモデルの大半は札幌時代に構想したもので、創業の地でさらに創造的なビジネス展開を図る。若者が働きたいと思うようなオフィスを新築し、優秀なIT人材の確保にもつなげたい考えだ。

  • 本社所在地
    東京都港区虎ノ門一丁目3番1号
    東京虎ノ門グローバルスクエア14階
  • 道内所在地
    北海道札幌市中央区大通東10丁目11番地4
  • 企業サイトURL
    https://www.wellnet.co.jp/index.html
  • 事業内容
    代金決済・電子請求・電子決済、携帯認証ソリューションの開発・提供

ー事業内容について教えてください。

DX化によるクラウドサービスを提供している会社で、事業の柱は2つあります。1つは決済のスマホ化と請求の電子化、キャッシュレス化ができる電子マネーのスキームを進めています。もう1つは、コンビニエンスストアで高速バスのチケットを発券する日本初のサービスで、日本のバス会社さんのほとんどは当社のサービスをお使いいただいています。また最近では、スマートフォンで交通機関を一括して利用できる「MaaS (マース)というシステムが注目されていますが、これにも取り組んでいます。

ー電子決済に取り組んだきっかけは?

もともとは、札幌にあった燃料会社の新規事業開発専門の子会社でした。24時間現金で払えるコンビニは非常に便利だというところから、まず親会社向けにコンビニ決済を提供し、それを汎用化するためのアプリケーション開発を行ったことがすべての始まりです。

ー札幌から東京に本社を移した理由は?

やっぱり東京には非常に多くの情報が集まりますから、そこで対面する機会が貴重なのではないかと思ったわけです。そこで東京に移ったところ、東京はあまりにも情報過多で、なかなかそれを発酵させる時間がないというか、ビジネスとして実現させる余裕がないことに気がつきました。

ー東京から札幌に戻ることを考えたのは?社員の反応は?

具体的に考え始めたのは5年ほど前ですね。我々のビジネスモデルのほとんどは札幌にいた時に構想したもので、東京よりも札幌にいる方が創造的な仕事ができるというところが1つです。もう1つは、東京に本社を持ったことで札幌と物理的に離れてしまい、とても非効率になってしまったところがあって、トータルで札幌に本社があった方がいいという判断をした結果です。

ー実際に移転して、社員の反応は?

札幌への移転については、大半の社員がもともと札幌で働いていたのでほとんど影響はありませんでした。東京の社員の中には引っ越しができないという人もいましたし、札幌へ永住する決断をした人もいます。そのあたりは、移転という大きな方針に対応していくしかありませんので。

ー北海道に移転したメリットは?

世界的に見ても、IT業界が集約しているのは寒冷な地域です。東京は気候的に言えば亜熱帯ですから、北海道のほうがITやDXの開発にあたって地の利があるではないでしょうか。通信の発達で、距離のハンデもありませんし。北海道出身のエンジニアには地元愛が強い人が多いので、人材の確保もしやすいと思います。

ー移転でデメリットと感じることは?

デメリットは特にありませんね。新しい本社のコンセプトが「ひとつ屋根の下」ということで、若者が働きたいと思うようなオフィスを作ったものですから、コミュニケーションも活発になり、チームワークもさらに増したと思います。社員も喜んでくれているのではないでしょうか。

ー道内の大学や専門学校などとの連携は?

IT企業で九州に移転する会社はわりと多くて、九州はIT人材が豊富だという話をよく耳にするんですが、実は北海道も負けていません。高等専門学校が4つもあるのは北海道だけですから。北海道に対して恩返しをしたいという思いから、北海道の4つの高等専門学校の学生を対象とした「ウェルネット基金」を立ち上げて、将来のDXを担う人材育成の支援をしています。ほかにも、北大とはブロックチェーンの共同研究もしていますし、産学連携もしやすい環境だと感じています。

ー北海道などの支援体制は?

ウェルネットという会社を立ち上げた当初、事業に必要な5,400万円のサーバーを北海道からの支援金で購入しました。今回の本社移転に際しても、道庁をはじめ、札幌市や経済界の方々からも非常に歓迎していただきまして、とても嬉しく思っています。

ー北海道という土地の魅力は?

北海道の人の発想は柔軟で自由なんですよね。行政の方々も、ユニークなアイデアを面白いと言える感覚をお持ちの方が多いので、ベンチャー企業や新しいサービスを生み出す土壌としては非常にいい環境だと思います。また、東京では普通のサラリーマンが一軒家を持つというのは夢物語ですが、北海道ならそれが実現できます。きれいな空気やのびのびとした雰囲気の中で、一度住んだが最後、もうよその土地には行きたくなくなると思います。

ー今後の展開やビジョンを教えてください。

ITやDXはトラフィックが少ないところにこそ必要なもの、というのが私の持論です。北海道のように、人口が集積している大都会とそれから人がまばらな広大な地域で、ユニバーサルサービスを提供できるテクノロジーがDXやITです。5Gで通信速度が速くなると、DXはますます大きな役割を果たすことができるはずで、そういうサービスがあれば広々とした地域に住みたいと思う人は私も含めてたくさんいるはずです。もう一度北海道に拠点を移して、これからの時代に求められる創造的なビジネスを展開しようという思いを強くしています。

Profile

ウェルネット株式会社 代表取締役社長

宮澤 一洋さん

  • 1983
    明治大学政治経済学部卒業
  • 1996
    株式会社一髙たかはし(札幌市)へ新規事業開発担当として入社。
    事業開発子会 社(ウェルネット株式会社)へ異動、
    事業開発担当取締役就任。
  • 2009
    代表取締役社長

1960年長野県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業後、ガス・水道のメーターメー カーへ就職。
その後、1996年に株式会社一髙たかはしへ新規事業開発担当として入社。
事業開発子会社(ウェルネット株式会社)へ異動し事業開発取締役としてコンビニ決済サービス開発に携わり、利用者を急速に拡大。
2009年より代表取締役社長に就任。

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