Interview

DXが当たり前の社会で、
北海道のデータセンターが
できることとは。

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長

田中 邦裕さん

DX(デジタルトランスフォーメーション)を支える社会的インフラとして、データセンターの重要性が増し続けている。2011年に石狩市にデータセンターを開設したさくらインターネットの田中社長の目標は、どんな会社にもITエンジニアが雇用され、いきいきと働ける社会の実現だ。その中で同社の質のいいクラウドが使われることで、継続的な成長を続けるビジョンを描いている。

  • 本社所在地
    大阪府大阪市北区梅田1-12-12
    東京建物梅田ビル11階
  • 道内所在地
    北海道石狩市
  • 企業サイトURL
    https://www.sakura.ad.jp/corporate/
  • 事業内容
    データセンターサービス事業

ー石狩にデータセンターを開設した理由は?

北海道にデータセンターを立地するメリットとしては、土地が広くて安いということもありますし、自然エネルギーが充実しているということもありますし、また外気を使ってサーバを冷やすことで消費電力を減らすこともできます。エネルギー的にもコスト的にも優れた場所、それが北海道・石狩でした。

ー石狩データセンターの社員は道内採用ですか?

石狩で働いている社員はほとんどが道内の人です。Uターン・Iターンもありますが、道内採用が一番多く、基本的には北海道の会社のような位置づけになっていますね。石狩データセンターは、単にサーバーを置くというだけではなく社員が快適に働ける場所を目指して、例えばバーのような一角やオープンスペースなども用意して、イベントなどもやってきました。以前は私も年に何度も石狩に足を運んでいましたが、コロナ禍で気軽に行けなくなって、今度2年ぶりぐらいに行く予定です。

ーデータセンター事業での北海道の優位性は?

北海道の優位性としては、やはり土地が広いということや、気候的に冷涼であるということも挙げられると思います。自然エネルギーが豊富であることから、東京に電力を送るぐらいなら北海道にデータセンターを立地してそこで消費電力を地産地消するということが、新しい価値として出てきています。また最近では、北極圏を中心とした経済圏が注目されています。例えば光ファイバーも、赤道付近よりは北方で一周するほうが距離的に短いですし、世界中の大都市は北の方にあるということからも、アジアで一番他の国に近い場所、それが北海道という考え方もできます。

ー同業他社にはない御社の強みは?

弊社の強みとしては、やはり自社でできることが多いという点です。土地を用意してデータセンターを作り、運用の人間を雇った上でシステムを構築して、サービスの営業からサポートに至るまで全部自社でやっている会社というのは、IT業界では珍しいのではないでしょうか。さらに、全員が正社員で転職・離職率が非常に低いことも強みです。社員が長く働けば働くほど熟練度が高まりますし、新しい技術に対するキャッチアップもしやすくなります。人材が流動化してその確保が難しい世の中で、継続的に優秀な社員が働いてくれている、これがさくらインターネットの一番のストロングポイントかもしれません。

ーSDGsに対する考え方は?

SDGsをCSRの延長線上の意味で捉えている会社も多いと思いますが、本質的に言うとSDGsは新しいビジネスを生み出すものと考えた方がいいと思っています。最近の新入社員たちにとってSDGsは当たり前のことなので、SDGsへの取り組みが良いことというよりも、それができない企業は滅びるだろうというぐらいのイメージなわけです。北海道は、食糧の自給自足や環境に優しいエネルギーといった取り組みがしやすいフィールドです。そういう意味でも、もっと北海道で働くのが楽しくなるということが必要です。給与の低さや労働時間の長さ、IT化の遅れなど、地方に共通する問題点を1つずつでも変えていくことが、北海道に立地する企業としての使命でもあると思っています。

ーITによって北海道はどう変わっていくと思いますか?

今の社会では、ともすれば仕事=苦行のように捉えられがちですが、本質的にいうと、もっとITでラクができること、快適になることと、加えて生産性が上がること、この3つが同時になし遂げられるわけです。自然と人間がラクをしながら生産性を上げられる方法がITにあるわけですから、仕事は苦しいものという空気が、北海道のおおらかな環境の中でどんどん変わっていくといいと思っています。

ーウィズコロナ時代の展望は?

コロナ禍によって世界は大きく変わりました。その一つが、デジタルの上で生活をすることが普通になったということです。例えばミーティングなどもデジタルで、また購買行動もデジタルでということが当たり前になりました。リアルの世界で稼ぐだけではなく、デジタルの世界で稼がなければならない、これがDXという流れだと考えています。加えてDXが進んだ世界というのは、地域格差というのが減っていくだろうと想定しています。

ー今後の展開やビジョンは?

すべての人がデジタルトランスフォーメーション、またコロナ禍で体験したデジタル上での生活ということを全面的に受け入れて、それに加えてリアルで会うことの楽しみを作っていくことで、世の中が大きく変わると考えています。私たちが目指しているのは、すべての会社がITエンジニアを雇えるような社会、ITエンジニアがどんな会社でもいきいきと働ける社会です。その中で弊社は、さまざまな企業の方々に質のいいクラウドをどんどん使っていただくことで、成長を継続的に続けていきたいと考えています。

Profile

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長

田中 邦裕さん

1978年、大阪府生まれ。18歳の時にさくらインターネットを学生起業し、2005年に東証マザーズ、2015年に東証一部上場。
2011年には北海道に石狩データセンターを開所。
元々のバックグラウンドはエンジニアでありながらも自らの起業経験等を生かし、スタートアップ企業のメンターや、IPA未踏のプロジェクトマネージャー・国立高専機構運営協議会委員として、若手起業家や学生エンジニアの育成にも携わる。
さらに業界発展のため、SAJやJDCC等各種団体に理事や委員としても多数参画。
また、一ヶ月の長期休暇取得、大阪・東京に加え那覇に居を構えてのリモートワークなど、新しい働き方やパラレルキャリアを実践している。

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