ミツミ電機株式会社 取締役常務執行役員
千歳事業所長
矢野 功次さん
家電製品やスマートフォンなどの情報機器から、自動車や航空・宇宙製品、そして医療機器など、幅広い分野で使用される超精密技術を誇るミネベアミツミグループの一員として、半導体の設計・開発・製造を行うミツミ電機千歳事業所。1983年から拠点にしている北海道・千歳という立地環境こそが高品質のものづくりに欠かせない、そう語る事業所長の矢野氏が見据える半導体ビジネスの将来像とは。
千歳事業所では半導体の設計・開発・製造を行っており、半導体の量産拠点としては北海道唯一だと思っています。また、我々ミネベアミツミグループは、機械の回転をスムーズにするベアリングをはじめとする機械加工品、モーターなどの電子機器、自動車の部品や住宅機器など、さまざまな機械電子部品を手掛ける相合(そうごう)精密部品メーカーです。
一般的な「総合」ではなく、相合わせることを意味した言葉です。自社の保有技術を融合し、活用してコア技術を進化させると共に、進化した製品をさらに相合、つまり相合わせることで、様々な分野において新たな製品を創出していくということをやっています。
約40年前に千歳市が職住隣接の新しい工業団地(臨空工業団地)を開発し、地元の関係者から熱心にお誘いいただいたと聞いています。広大な土地と潤沢な水資源、きれいな空気といった環境は、「産業の米」と言われ、当時から成長が期待されていた半導体事業を行う場として最適でした。
半導体製造にとって非常に重要であるきれいな空気と潤沢な水に加えて、近くには新千歳空港があり、道央自動車道が南北に走っていて、南には苫小牧、北には小樽という港もあるという、陸海空の交通アクセスの良さが大きな魅力です。大都市の札幌に非常に近いということもあって、働く人にとって最高の環境だと考えています。
半導体工場は熱を発する装置が多いので、年間を通じて冷却する必要があります。千歳は冬期間の寒さを利用して外気で冷却できるため、エネルギーとコストの削減になります。また、最大のメリットは北海道の優秀な技術者を大量に採用できていることです。大学・大学院卒の方や、高等専門学校出身の技術者の方など、道内の優秀な人材に支えられています。また、道外の顧客や取引先の方々に、北海道のおいしい食を味わっていただけることもメリットのひとつです。
私自身もそうでしたが、大学進学でいったん道外に出ることがあっても、基本的には北海道が好きだという思いがやっぱり根っこにありまして。千歳にこのような半導体工場があるというのは、理系の大学などで学んだ人にとって必要なことではないかと考えています。
特に大きな問題と感じることはないのですが、強いて言うならばやはり冬場の雪対策でしょうか。千歳は北海道の中でも雪は少ないほうですが、それでもいつ降るかわからない雪への備えが必要で、そこがちょっと大変かもしれません。
豊かな自然環境やさわやかな気候に加えて、よく耳にするのはアクセスの良さですね。新千歳から羽田への便は、もう本当にバスの本数ぐらいありますし、190万都市の札幌もすぐ近くですし、社員からは便利で住みやすい環境だという声を聞いています。
千歳のある道央圏についていえば、自然環境に恵まれている一方で、社会インフラもしっかり整備されている点は本当に素晴らしいと思います。あとはやはり人です。真面目で粘り強く優秀な人材が多いということは、メーカーにとっては大きな魅力であり、北海道のアドバンテージではないでしょうか。
この北海道の地から持続可能な社会を実現する、省エネルギーの面でその中心になっていくのが半導体だと思います。我々が作るアナログ半導体は、花形であるパソコンのCPUやプロセッサーを動かすための陰の存在ですが、しかしそれがないと機器は作動できません。皆様の日常を縁の下で支えるものづくりで社会に貢献していく、今後もこれを中心として事業を展開していく所存です。
高品質な半導体を世界中に供給することで、豊かな社会の実現と、社会的課題の解決に寄与していきたいと思っています。この千歳事業所にはまだ敷地に余裕がありますので、さらに事業を拡大していきたいという構想も持っています。旺盛なアナログ半導体ビジネスの需要に対して、より良い品を安定供給していくために、今後も皆様と一緒に事業運営を進めてまいりたいと思っています。
プロフィール紹介
ミネベアミツミ(株)常務執行役員
兼 ミツミ電機(株)取締役常務執行役員 半導体事業部長
兼 千歳事業所長
矢野 功次さん
北海道伊達市出身