Interview

ロケット産業を、
ロケットを中心とした
産業に発展させていく。

インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長

稲川 貴大さん

学生時代に「CAMUIロケット」に感銘を受けてロケット開発の道に進んだ稲川社長。インターステラテクノロジズの本社がある大樹町の人々に支えられながら、観測ロケットや人工衛星打上げロケットの開発に取り組んでいる。ロケットの開発と打ち上げ、人工衛星の利用、その両方で宇宙に深く関わる地域として、北海道にはまだまだ大きな可能性があると考えているそうだ。

  • 本社所在地
    北海道広尾郡大樹町字芽武690番地4
  • 道内所在地
    北海道広尾郡大樹町字芽武690番地4
  • 企業サイトURL
    http://www.istellartech.com/
  • 事業内容
    ロケットの開発・製造・打上げサービス

ー事業内容について教えてください。

十勝の大樹町でロケット開発を行っています。宇宙開発領域が民間事業として行われる時代になり、人工衛星を作る、人工衛星を撮ったデータを解析するなど様々な事業領域がある中で、我々はロケットを自社で設計して作って打ち上げる、宇宙への輸送サービスを提供しようと考えています。すでに観測ロケット「MOMO」の技術実証や打ち上げを行っていますが、今後は超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の開発も進め、宇宙への移送サービスを本格化させていきます。

ー宇宙やロケットに興味を持つようになったきっかけは?

子どもの頃から宇宙が好きだったわけではなくて、宇宙業界やロケットに興味を持ったのは大学生の頃です。北海道で開発された「CAMUIロケット」を見て、大学や中小企業でロケットが作れるということに驚いたことがきっかけです。宇宙開発がもっと身近になる時代が来ると確信して、このインターステラテクノロジズの前身団体である「なつのロケット団」に参加しました。

ー大樹町に本社設立を決めた理由は?

ロケットの打ち上げ場所に非常に優れた場所だからです。人工衛星は東側や南側に打ち上げる必要があるので、東南に大きく海が開けているところ。そして広い敷地があって、ロケット打ち上げの保安区域を取れる場所。さらにロケット打ち上げに対する理解がある地域。そういった観点で日本全国を見たときに、この大樹町がベストでした。

ー設立にあたって町や北海道からの支援・協力は?

会社設立を決めた時点で、大樹町役場の方から工場や打ち上げ場所の候補をご紹介いただきました。実際の打ち上げになると各方面との調整が必要になりますが、役場や北海道庁をはじめ、複数の行政の方々にサポートしていただいています。また昨年、本社の工場を増設した際には北海道の補助金を活用させていただきました。

ー大樹町の町のみなさんの雰囲気は?

北海道全体、特に大樹町のみなさんにはとても応援いただいています。ロケットの打ち上げには地元のサポートが不可欠です。町内には「大樹町インターステラテクノロジズ後援会」があって、実際にロケット打ち上げの時には、ボランティアで見学場を案内していただいたり、いろいろとお手伝いをいただいたり。いち民間企業に、町を挙げてこれだけ支えていただいていることに感謝しています。

ー大樹町で生活してみた感想は?

私は埼玉県出身で、大学も東京でした。寒さや雪の問題も含めて北海道で暮らすことに不安はありましたが、実際に住んでみるとまったく心配ないどころか、今は東京よりも大樹町の方が住みやすいと感じるほどです。道東はあまり雪が降らない地域で、除雪の手間もそれほどありませんし、冬の寒さについても家の断熱・防寒対策がしっかりしているので、逆に関東の家の方が寒く感じます。ロケットの発射場は世界中にありますが、砂漠の真ん中など、街からものすごく離れた場所というのがほとんどです。大樹町の場合は、町の中心街からロケット発射場まで20分くらいなので、そういった意味でも非常に優れた場所ですね。

ーものづくりという観点での北海道の優位性は?

北海道は、工業的な基盤としてはそれほど大きくはないというのは事実です。一方で、北海道大学や室蘭工業大学など複数の研究教育機関があり、道内各地には産業基盤もあるので、それらとの連携で可能になることも多いと思います。現状で、北海道内で調達できる部品だけではロケットは作れないので、どうしても道外の企業に注文するケースが多いのですが、中1日でモノは届くので大きな不便は感じていません。

ー浦安市と大樹町に離れた拠点を持つメリットは?

広い敷地が必要になるロケットの開発は関東・東京近郊では難しいので、大きなものはすべて北海道でやっています。一方で小さいもの、例えばプログラミングや小さい電子基板の製造などはどこでもできるので、それは関東でやろうと。作るものに応じた視点の切り替えや場所の拠点の違いを出せるのがメリットですね。

ーロケット開発や宇宙産業が北海道にもたらす影響は?

北海道で宇宙産業をやるという会社は、これから複数現れると思います。北海道のように、広大な土地があり、人口が減少していて自動化や生産性の向上が強く求められる地域こそ、宇宙を利用したサービスが活用できますから。ロケットの開発や打ち上げというハード面と、人工衛星の利用というソフト面、その両方で宇宙に深く関わる地域が北海道です。今後はロケット産業から、ロケットを中心とした産業に発展させていくべきだと思っています。

ー北海道における今後の展開やビジョンは?

インターステラテクノロジズの「ZERO」というロケットで打ち上げた人工衛星との統合サービスを開発する子会社「Our Stars」を設立しました。この子会社で、地球観測や通信など複数のビジネス活用を計画していますが、やはり一次産業が非常に豊かな北海道でまず使われていくだろうと想定しています。

Profile

インターステラテクノロジズ株式会社
代表取締役社長

稲川 貴大さん

  • 2013.4
    インターステラテクノロジズ株式会社 入社
  • 2014.6
    同社 代表取締役社長 就任

1987年生まれ。東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了。
学生時代には人力飛行機やハイブリッドロケットの設計・製造を行なう。
修士卒業後、インターステラテクノロジズへ入社、2014年より現職。
経営と同時に技術者としてロケット開発のシステム設計、軌道計算、制御系設計なども行なう。
「誰もが宇宙に手が届く未来を」実現するために小型ロケットの開発を実行。
日本においては民間企業開発として初めての宇宙へ到達する観測ロケットMOMOの打上げを行った。
また、同時に超小型衛星用ロケットZEROの開発を行なっている。

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