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Interview

ニセコへの本社移転は、
これからの時代に
生き残るための戦略。

株式会社ルピシア 代表取締役会長兼社長

水口 博喜さん

世界のお茶専門店のルピシアが、本社(本店所在地)を渋谷区代官山からニセコに移転させたニュースが大きく報じられた。自身もニセコ町に移住した代表の水口氏は、「移転や移住にはメリットしかない」と断言する。豊かな自然に囲まれた「おしゃれな田舎町」で、レストランや食のセレクトショップ、羊蹄山麓ビール、木造の新社屋など、次々と新たなビジネスが展開されている。

  • 本社所在地
    北海道虻田郡ニセコ町字元町436-2
  • 企業サイトURL
    https://www.lupicia.com/
  • 事業内容
    世界のお茶・茶器雑貨等の輸入、製造・販売
  • 取材年
    令和3年度

ー事業内容について教えてください。

世界中のお茶を扱っていて、店舗が130店ぐらいある製造小売業です。もともと原料を輸入して、自社でクリーニングや焙煎、ブレンドなどをして、それを小売りしています。ここ数年はお茶以外に、他の食品関係やビール、そういうものも始めたところですね。

ー移転を考えるようになったきっかけは?

都会にいるよりも地方のほうが自然に接することができますし、いろいろなことを考えられるんじゃないかと思ったことが一番ですね。その後のコロナ禍で、都会は非常に密度が高いなど危険性が高いことが問題になりましたし、さらにテレワークが進むと、別に都会である必要がありませんから。

ー移転先をニセコに決めた一番の理由は?

10数年前からニセコに保養所を持っていて、スキーをしによく来ていたんですが、多くの外国人が訪れるようになっていろいろ変わりました。ホテルやショップが続々と出来て、言ってみればおしゃれになった、そこが一番大きいですね。

ー北海道に移転する際の社員の反応は?

東京が本社でしたから、ほとんどの社員が東京に住んでいて、そう簡単に誰もが移住できる状況ではありませんでした。ただ、東京にはリスクが多すぎて、我々は地方に来ることで生き残りを考えたものですから、その意味ではできるだけ多くの社員に来てほしかったですね。それでもまだ来られない社員もいますが。

ー ニセコで暮らしてみた実際の感想は?

もっと早く来ればよかったと思います。私の両親は旭川の出身ですが、私はずっと東京で育ったので、地方で暮らすということがイメージできていなかったのですが、実際に住んでみると実に素晴らしいし、早く来ればよかったなと、それだけですね。こちらに来てから基本的に一切後悔したこともなく、本当にいいところだと思います。移住してきた社員たちも、みんな問題なく良かったと言っていますね。

ー 地方で生活するメリットは?

事務所の家賃をはじめ、少なくとも東京よりはいろいろなものが安いわけです。ライフスタイルもまったく違って、例えば私が東京から移住してきたときはスーツもワイシャツもたくさん持って来ましたが、ここでは年に1〜2回しか着ることがありません。農家さんと仲良くなっていれば、新鮮な野菜を非常に安く分けていただけることも。同じ給料で、東京の倍以上の優雅な生活ができるんじゃないですかね。また小さなことですが、信号待ちやエレベーター待ちのストレスがないということも、精神衛生上での影響は大きいと思います。

ー北海道のこれからの優位性は?

暑くなる一方の本州に比べて、北海道のような地域が住みやすくなっていることは確かだと思います。あまり観光地化していない部分がまだ多くあるように見受けられますが、自然環境としては非常にすばらしいものがあるので、ちょっと手を加えればもっともっと良くなるのではないかと思います。

ーレストランをスタートさせた戦略は?

ニセコに外国の方が増えてまちの雰囲気が大きく変わったことと、お茶に加えて違う食材にも挑戦していこうということで、レストランを作ろうと。レストランだけだと、リゾート地ではハイシーズンしか成り立たないので、このあたりの食材を使った食品工場も一緒に始めました。今は、食材を契約して作っていただいている農家さんもあります。

ー新事業として地ビールに挑戦した理由は?

「お茶の会社がどうして地ビールを?」とよく聞かれますが、ビールづくりを始めたのは、地元の人たちと仲良くなるための一番のアイテムだからです。地元でできたビールで一緒に乾杯すれば、すぐに地域の人たちとの距離が縮まります。これはお茶では難しいことです。正直な話、クラフトビールをビジネスにするのは難しいのですが、地元の人たちとのコミュニケーションツールとしては最高です。

ーこれから建設する本社棟の考え方は?

個人的に鉄筋コンクリートが好きではないので、我々の保養所などはほとんど木造なんですよ。このレストランもほとんど木でできているし、これから建てる本社棟も木で造ります。木より鉄筋の方が長持ちすると言われても、人間にとっては木材の方が自然ですから。鉄筋コンクリートは古くなってしまったら見る影もありませんが、木ならだんだん味が出てきますし、ニセコの風景にも調和すると思います。

ー今後の展開やビジョンを教えてください。

何年後にいくらの売上にするといった、一般的な会社のようなことはあまり考えていません。今の世界で拡大を続けるというのは、もう難しいですから。社員も周りの人たちもみんながいきいきと暮らせること、それがすべてです。何か新しい食材や新しい食品をやってみようなど、そのタイミングで判断しながらやっていきます。そのためにも、とにかく生き残っていくということが大事だと思っています。

Profile

株式会社ルピシア 代表取締役会長兼社長

水口 博喜さん

  • 1980.4
    株式会社中央クーパースアンドライブランド・コンサルティング 入社
  • 1985.11
    株式会社ワールドインフォメーショントレーディング(現:株式会社ルピシアホールディングス)設立 入社
  • 1989.3
    同社 代表取締役社長(現任)
  • 1994.8
    株式会社レピシエ(現:株式会社ルピシア)設立
  • 2001.8
    同社 代表取締役社長 就任
  • 2016.10
    同社 代表取締役会長 就任
  • 2020.5
    同社 代表取締役会長兼社長(現任)

兼務役職
株式会社ルピシアホールディングス 代表取締役社長
株式会社ルピシアグルマン 代表取締役社長
株式会社ルピシアトレーディング 代表取締役会長

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