富士レビオ株式会社 取締役
二宮 忠司さん
音更町の十勝帯広工場に続き、新たな生産拠点として旭川市に旭川工場を開設した富士レビオ。他社工場の一部を借り受けて、新型コロナウイルス検査キットの生産工場として稼働させるという機動性の高さで、需要の高い製品の生産キャパシティ拡充と国内外への安定供給を実現させている。取締役の二宮氏が語る旭川や北海道の魅力、そして富士レビオの今後の展開とは。
弊社は、いわゆる体外診断用医薬品を製造販売している医薬品の会社です。医薬品では、病気等を治すための治療薬が一般的によく知られていますが、弊社はそういう治療薬ではなく、ある病気にかかっているかどうかを診断するための診断薬に特化した会社です。
富士レビオでは、国内初となる新型コロナ肺炎の診断薬を開発・発売しています。既存の工場だけでは十分な試薬を供給できないということで、生産キャパシティを上げるために新しい工場を開設するというプロジェクトを進めており、その第一の候補がこの北海道・旭川という場所でした。非常に短期間で工場を立ち上げる必要があったので、現在は東芝ホクト電子様の工場の一部を富士レビオ用の生産工場として借り受けて稼働しています。薬品の製造工場を開設するのに十分な広さ、クリーンルームと呼ばれる清浄な製造環境、それらの条件がある中で、我々の新工場を開設するのに適した場所として、旭川の東芝ホクト電子様の工場の一角が見つかり、そこに急ぎ工場を開設したという経緯です。
工場長や一部の管理職については富士レビオの社員ですが、工場の従業員や製造に従事する方の大半が、東芝ホクト電子様からの出向という形で働いていただいています。ただ、それだけでは人手が足りなかったので、20名程度の規模ですが、派遣社員という形で地元採用を行いました。
私自身、少なくとも月1回は旭川工場に行って仕事をしていますが、十勝帯広にも工場がある関係で、もともと北海道にはよく行っていました。北海道という土地にもある程度の馴染みがあったのですが、ひとつだけ驚いたのは旭川の雪の多さです。十勝帯広はほとんど雪が降らないのに対して、旭川は豪雪地域なので、昨年の冬に初めて旭川の冬を経験して、こんなに雪が降るのかということについては正直驚きました。
非常におおらかな土地柄ということもあって、住環境としては素晴らしい地域だと思います。ただ、寒さや雪は本州に比べてかなり違うので、出張で訪れる社員や他の地域の工場から転勤したメンバーは少し驚いているようですね。非常に自然が豊かで、食べ物も美味しいですし、ワークライフバランスの面でも非常にいい環境ではないかと思っています。
新型コロナウイルス感染症が非常に流行する現在の状況下で、新型コロナ肺炎の検査キットを製造しているということで注目されてはいますが、もともと富士レビオは、診断薬の領域では非常に幅広い分野の薬を製造販売しています。今回新設した旭川工場で作っているのは簡易キットと呼ばれるもので、お医者様や患者様が、特別な装置を必要とせず、ベッドサイド上ですぐに検査できるようなキットです。この簡易キットに関しては、新型コロナだけではなく、たとえば梅毒やB型肝炎など他の病気の診断をする試薬もラインナップに揃えています。今は新型コロナの診断薬の需要が非常に高いので、そちらの生産に集中させていますが、新型コロナウイルス感染症がどういったタイミングでどのように終息していくかということについては予測が困難です。それに備えて、新型コロナ以外にも様々な疾病に関する診断薬を引き続き開発・販売していきます。そのためのPOCT(臨床現場即時検査)と呼ばれる製品群の生産拠点として、旭川工場は今後も活用する予定です。
今のところ旭川で具体的な計画はありませんが、事業の成長に応じて、工場の拡張などは今後も発生することになると思います。それが旭川になるのか、それ以外の既存の工場になるのか、もしくは全く新しい土地を新たに見つけるのか、投資の規模や拡大の規模、その時の状況によって改めて検討することになると考えています。
今申し上げたように、新しい工場を拡張するなどにあたって、どの地域にするかということはまだ具体的に決まっているわけではありません。ただ一方で、我々の工場がある山口県の宇部も、旭川や十勝帯広も、台風や地震などの大規模な災害には強い土地だと感じています。北海道は数年前に大きな地震がありましたが、災害に対して比較的安定している土地という認識には変わりがありません。既存の土地に工場を広げるにしても、新しい土地を探すにしても、そういう事業継続上のリスクが少ない土地というのは重要なポイントです。その意味では、やはり北海道というのは候補の1つになってくるでしょうね。
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二宮 忠司さん