パナソニック スイッチングテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長
元吉 圭太さん
帯広市内に126,000m²もの広大な敷地を有するパナソニック スイッチングテクノロジーズ株式会社。1974年の操業以来、1次産業がメインの十勝の中で製造業として成長を続け、今では車載電子機器製造のトップメーカーに数えられている。事業の継続と拡大による雇用の創出に加え、SDGSやカーボンニュートラルの面でも地域貢献を進めていきたい、それが社長の元吉氏のビジョンである。
私どもの工場では、日本語では「継電器」という、リレーと呼ばれる電子部品の開発・生産・販売をしています。特に自動車用の車載リレーに力を入れており、その一種であるEVリレーは、環境対応車の登場当初から自動車メーカーに納入し、現在では世界のハイブリッド車や電気自動車にはほぼ弊社の製品をご採用いただいています。きわめて高度な安全性が求められる自動車業界において、実績と信頼を積み上げながら多様なニーズにお応えしています。
今から半世紀前の1970年代、旧松下電工株式会社では配線器具の工場を設立するための適地を探していました。当時の松下電工株式会社の社長だった丹羽と帯広市の助役を務められていた木呂子(きろこ)さんが学生時代から親交が深く、この帯広工業団地のプロジェクトが立ち上がった頃から誘致のお話をいただいていたそうです。そして1973年に最初の工場を設立して、帯広松下電工株式会社としてここ十勝での事業をスタートさせたというのが北海道進出の経緯です。
日常的にも非常に活発に連絡を取り合っています。ビジネスエキスポなどの技術の展示会に一緒に参加することもありますし、あとは自社製品を共同で開発する、システム開発を一緒にするというような時には、Zoom等のツールを使いながら協働していますね。
当時、土地の価格が非常にリーズナブルで、広大な敷地を入手できたということも進出の一つの要因ではありましたが、自動車に使われる電子機器という精密部品の製造にあたっては、きれいな空気というのが非常に重要です。一年を通じて澄み切った十勝の気候は、精密部品を作る上でとても適していると思います。
道外から来て、素晴らしいと感じるのは四季がはっきりしているところです。特に、晴天率が高く、空の青と雪の白のコントラストが美しい冬は、十勝ならではだと思います。実は、ここの責任者になる前にドイツに赴任していた経験があり、十勝の気候は南ドイツとよく似ているので、帯広には初めて来たのになんとなく懐かしさを感じました。
豪雪地帯ではないので、積雪量というよりもやっぱり気温の低さですよね。北海道内でも内陸部ということで、冬の寒さの厳しさは確かに実感しています。ただ、建物の密閉性が非常に高いので、家では冬でも半袖で過ごせるぐらいです。室内に関しては、本州の冬よりも暖かくて過ごしやすいと思いますね。
製造業として事業を展開していく上で、人材の確保が難しくなっていることを感じています。帯広とその周辺から来て働いていただいている方に、今以上に働きやすい環境を整えて、採用のみならず離職率を極限まで抑えていく、地域に根ざした企業としてこの努力が非常に大事だと考えています。
優位性とは少し違うかもしれませんが、我々のような電子部品メーカーさんが周りにあまりない、農業や酪農業が主体の十勝地方で工業製品を作るということが、地域に対する貢献という意味で非常に意味のあることだと考えています。将来的にも、我々がこの事業を展開させていただいている帯広に対する貢献というものを強化していきたいですね。
従業員や関連企業の皆様をはじめとして、広く地域に対する貢献というものを考えたとき、やはり長く事業を継続するということが大事だと思います。創業当時は200名弱だった従業員が、50年後の今では帯広工場従業員700名、総勢で1,200名ほどの規模になりました。北海道・十勝という土地でお世話になっている企業として、これからも私たちの事業を、次の30年、50年あるいは60年と継続させたいですし、さらに規模を大きくして地域貢献していきたいと考えています。
SDGSあるいはカーボンニュートラルという社会的な課題に対し、我々の事業においてもその取り組みがますます重要になってきます。これまでは主に人材の雇用という面での地域貢献をしてきましたが、これからは地域の特性に合ったエネルギーを検討する方針を掲げています。具体的には、酪農業で排出されるふん尿をメタンや水素に変え、それを工場でのエネルギーに活用するほか、この水素を製品の材料としても利用できればと考えています。
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代表取締役社長
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