株式会社カネカ
苫東工場長
菊川 宰さん
1949年の創業以来、人々の豊かな生活に欠かせない数多くの製品を生み出し続けてきた株式会社カネカ。「カガクでネガイをカナエル会社」というキャッチコピーの通り、ライフサイエンスから食品まで幅広い分野に及ぶ事業を展開している。2024年に完成した北海道苫小牧市の苫東工場では、吸着型血液浄化器・吸着型血漿浄化器をはじめ、今後もグローバルな需要に対応する医療機器を製造していく。
「カネカは世界を健康にする」という経営ビジョンのもと、地球環境と人々の豊かな暮らしに貢献するとともに、持続可能な社会の実現に取り組む企業です。高分子技術と発酵技術を基幹技術として、樹脂や電子材料、医療・医薬分野から食品、サプリメントまで幅広く事業を展開しています。これらの技術や製品を組み合わせて、価値あるソリューションを生み出すというハイブリッド経営を推進しています。
苫東工場では、血液中の悪玉コレステロールを選択的に取り除く、血液浄化用の医療機器を製造しています。吸着体を詰めたカラムの中に、血液や血液から分離した血漿を流すことによって悪玉コレステロールを取り除くもので、体内に必要なタンパク質などにはほとんど影響を与えないという画期的な医療機器です。
ロボット技術を活用して自動化された製造ラインが稼働する一方で、再生可能エネルギーを積極的に活用した環境配慮型の「ゼロエネルギーファクトリー」を目指しています。工場の外観もその理念を表しており、広大な北海道の空の下で吹き抜ける風や流れる水をイメージした、自然の力強さを感じさせるデザインになっています。
新たな製造拠点を作るということで全国の工業用地を調査し、インフラや用地面積を検討する中で、苫小牧市の東部地域に着目しました。苫東地区には広大な土地があるため将来的な拡張性が高いことと、陸・海・空の優れたアクセス環境があるロケーションも大きな魅力でした。
苫東への立地を決めたもう1つの大きな理由に、行政の強力なバックアップがあります。弊社としては半世紀ぶりとなる国内新規工場ですので、用地の取得から建設というプロセスの中で、行政の強力かつ的確なサポートをはじめ、各種法規制への対応に関する適切なアドバイスやご指導をいただきました。おかげで、工場稼働までスムーズに展開できました。
長く大阪の工場で製品を作っていたので原材料の調達先は関西が多く、特に冬場は北海道まで運搬することへの懸念がありました。また、我々の製品は低温に弱いため、寒さに対する不安も感じていました。ですが実際に操業してみると、物流面でも製品管理面でもまったく問題はありませんでした。
新工場の立ち上げということで社内のモチベーションは高かったものの、関西から単身赴任をしている社員もおり、当初は1〜2年で戻りたいという雰囲気もありました。ですが、今はここでやりきりたいという意識に変わってきています。中には苫小牧に家族を呼び寄せることを決めた社員もいます。夏は涼しく、冬の寒さも思ったほど厳しくないという気候と、住環境の良さもポイントだと思います。
苫東工場では次のプラント建設計画もスタートしています。そこでは医療用のカテーテルを生産する計画で、医療機器の新たな製造拠点としてさらに充実させていく予定です。北海道から世界を健康にするという目標に向かって取り組んでいきますので、ぜひご期待ください。
プロフィール紹介
株式会社カネカ
苫東工場長
菊川 宰 さん
1986 / 鐘淵化学工業株式会社(現 株式会社カネカ)入社
2010 / カネカ大阪工場医療器グループトランバス課長
2012 / Kaneka Medical Vietnam 工場長
2017 / Medical Solutions Vehicle 製造統括グループリーダー
2022 / カムイプロジェクト・サブリーダー
2023 / カネカ苫東工場長 兼 カムイプロジェクト・サブリーダー